■東大闘争後、国外に飛び出して出会った北アイルランド紛争を原点として、世界のマイノリティを訪ね歩く。アムネスティ運動、アジアキリスト教協議会スタッフとしてアジア民衆の人権闘争を支援。本書は、志半ばで倒れた「いまだ終わらぬ闘い」の貴重な記録である。■
四六判 縦組 240ページ 1998年刊
ISBN4-88323-106-2 C1036 定価 本体2300円+税
●目次●
序章 旅の軌跡
第一章 民族解放とナショナリズム――アイルランド
1 「幻の軍隊」IRAの実像 2 アイルランドの民族間題 3 デリー血の日曜日一周年集会に参加して 4 イギリスの「内なるアイルランド」 5 アイルランド、その後第二章 アジアのマイノリティを訪ねて――アジア
1 オークランドでのマイノリティの集い 2 マオリの誇り(ニュージーランド[アオテアロア]/マオリ) 3 小さな民のエコロジー(オーストラリア/アポリジニー) 4 ダムをぶっつぶせ(フィリピン/イゴロット)
5 モロの闘い(フィリピン/イスラム教徒) 6 スケープゴート(インドネシア/華人) 7 小さな畠の大きな戦争(東チモール) 8 よその土地で(スリランカ/インディアン・タミル) 9 イーラム建国をめざして(スリランカ/タミル) 10 自立と意識化を(インド/アディヴアシ) 11 解放を求めて(インド/ダリツト)
12 補論・アジアのマイノリティ
第三章 ナショナリズム・人権から共生社会へ 1 ナショナリズムと人権の接点 2 共生社会論 3 隣人理解教育のすすめ
●旅のエピソード●1,バングラデシュ救援募金 2,車中での盗難 3,フリージャーナリスト・ピーター 4,アジアでのバス旅行
5,ミンダナオヘの旅 6,フィリピン人アマー 7,タミルの知識人、シーラン 8,「シク・ファン・ラ」 9,ソウルでのアパート探し
10,韓国の学生活動家のアピール 11,カッタオルケ
■推薦文 1960年代末の「全共闘」世代として、経済・社会の体制化を批判して闘い、その 闘いに敗れ、敗れた心の傷を負って日本を飛び出し、底辺の人たちとの出会いを求め
て、あちらこちらを歩み、学んだその過程を記したのが本書である。 そして最後は韓国の「とりこ」となり、延世大学に学び、その志半ばで倒れた。この
世代の苦闘と苦悶とその解決への歩みを率直に語った貴重な記録である。広く読まれ んことを期待する。
( 隅谷三喜男・キリスト教アジア資料センター理事長)
■推薦文 蔵田さんの闘いは終わってはいなかった。 蔵田雅彦さんは徹底して底辺から、辺境から、ものを見ていく姿勢を追い求めて、壮
絶な闘いをしてきた人だ。これから、という矢先に病に倒れてしまった。しかし、こ の遺稿のなかには、まだ伝わっていない蔵田さんの思いが存分に書かれている。
若き頃、アイルランドを訪ねた旅の記録、アジアのマイノリティを訪ねた旅の記録は 、新鮮で感動的である。まだ終わらなぬ闘いが語られている。私の歩みの中にも、蔵
田さんの刻印がはっきりと押されていることが、この著作から分かってきた。
(村井吉敬・上智大学教員)
福音と世界
1999.7
読書室
「共生社会のあり方問うマイノリティ論」
神田健次(関西学院大学教授)
信徒の友
1999.5
ミニブックガイド
著者・蔵田雅彦氏は、1997年7月に天に召された(享年49歳)。おおよそ人間が50年かかっても出来ないようなことを、たった20数年でやってのけ、さっさと神の元へ行ってしまった。
「1968年から69年までの東大闘争をはじめとする大学闘争を自分なりにどう総括するのか……社会の変革の問題とどう関わっていくべきなのか。」20代半ばの著者は、日本での経済・社会の体制化を批判し、日本を飛び出す。世界の各地で底辺に追いやられた人たちとの出会いから学ぶ過程を記したのが本書である。アイルランドの民衆運動、アジアの旅、韓国・延世大学で神学を学ぶ中から著者は、「隣人理解」という考えを育んでいく。そこから国内にある在日外国人、アイヌ等の闘いに目をすえる。マイノリティの闘いの現場、国内の差別への闘いをふまえた問題提起は、著者からの今なお終わらぬ「問い掛け」である。
教師の友
1999.6
読書室
蔵田さんはその生涯で多くの旅をされ、そのひとつひとつが「人々の権利と自立、尊厳をめぐる闘いの現状にふれた体験」であったとふり返っておられる。その旅は、東大闘争に破れ、傷心の内に旅立ったヨーロッパでの北アイルランド紛争との出会いに始まり、アムネスティ・インターナショナル職員として、主にアジアの人権闘争のために、世界中を飛びまわって活動した時代、アジア・キリスト教協議会都市農村宣教部スタッフとして、またNCCキリスト教アジア資料センターの総主事として、アジアのマイノリティの困難な闘いを支援した時代(内2年間は香港滞在)ーこの間、国内では在日韓国・朝鮮人の人権運動の一端に触れ、一方で受洗するーその後、40歳にして韓国の延世大学大学院神学科へ留学した時代、と続いている。
帰国して、桃山学院大学教員となり、病を得てからも、「旅」は終わっていない。自らの体験をもとに、世界的に緊急で重要な課題「ナショナリズムと人権」の問題と、問題解決のための「隣人理解教育」の可能性の探求に余念がなかったことが、本書から伝わってくる。
最後に、本書は友人の門倉正美さんの尽力と、最後まで蔵田さんの同行者であった配偶者、和子さんの献身的な協力の結晶であり、この本を世に出すために100人をこえる本書刊行委員の方々の深い思いがあったことを覚えたい。佐伯博正(兵庫・無任所教師)
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