時代に翻弄される民族の言霊/汲めども尽きぬ悲しみの海
ISBN4-88323-140-2 C0097 Y2800E 体裁:四六判・上製・360ページ 定価 本体2800円+税
■台湾原住民のための最初の文学賞『第一回山海文学奨』が登場したのは1996年のことである。本書に掲載の11民族19作品は、この10年という「時代」が生んだ、それぞれの民族の魂を刻んだ傑作群。いま30代から50代の青壮年期の原住民たち、時代の転換期に遭遇した彼らの戸惑いと苦悩、そして希望が、この一冊に凝縮されている。
●目次● ()内:民族名
1 母の歴史、歴史の母……孫大川(パッラバン)〔プユマ〕
2 ホレマレ……ワリス・ロカン〔タイヤル〕
3 パンノキ……アタウ・バラフ〔アミ〕
4 リヴォクの日記……ロゲ・リヴォク〔アミ〕
5 出 草……ユパス・ナウキヒ〔タイヤル〕
6 花 痕……蔡金智〔タロコ〕
7 どうしてケタガランなのか?……楊南郡〔平埔族/シラヤ〕
8 タイヤル人の七家湾渓……マサオ・アキ〔タイヤル〕
9 雲豹の伝人……アウヴィニ・カドリスガン〔ルカイ〕
10 生の祭……ホスルマン・ヴァヴァ(ブヌン〕
11 大地の歌……ブクン・イシマハサン・イシリトアン〔ブヌン〕
12 ムササビ大学……サキヌ〔パイワン〕
13 薑路……バタイ〔プユマ〕
14 プリンセス……リムイ・アキ〔タイヤル〕
15 紅 点……ヴァツク〔パイワン〕
16 霧の夜……ネコッ・ソクルマン〔ブヌン〕
17 聖地へ……イティ・ダオス〔サイシャット〕
18 親愛なるアキイ、どうか怒らないでください……パイツ・ムクナナ〔ツオウ〕
19 マカラン……シナン・シュムクン〔タオ〕
【解説】木霊する生命の歌 柳本通彦
歴史の母
母の歴史は、わたしがプユマの歴史を捉えるための主要な手がかりであった。彼女の生命に宿る憂愁はプユマに宿る憂愁である。日頃から彼女の物静かで穏やかな表情を見ていると、そこにプユマの最後の黄昏が漂っているようにも思える。彼女が、周りの環境に対してときに見せるささやかな反応は、わたしが時代を見ぬく手助けとなってくれた。
すべての台湾人が原住民と同じく勇気をもって過去の遺恨を忘れ去らない限り、われわれは共存の機会を失い、この台湾という土地に自己の歴史を創造するということは永遠にできないに違いない。そして原住民が台湾史の母となる日がきっと来る。わたしはそう信じていたい。(本書/孫大川『歴史の母 母の歴史』より)
ホームに戻る
MAIL to WebMaster
|