■日本キリスト教会の朝鮮伝道はなんであったか?■
ISBN4-88323-142-9 C0095 Y1000E
体裁:46 判 160ページ 並製
定価 本体1,000円+税
■澤正彦は韓国を愛し、両国の和解に命を捧げた。戦後初めての日本人宣教師として韓国に渡り、日本キリスト教史を韓国の教会に紹介した。また韓国のキリスト教の歴史を日本の教会に紹介した。本書は韓国神学大学で教えた講義ノートを翻訳したものである
■本書目次から
一 日本の思想―日本人論│
二 日本キリスト教の歴史的背景
(1)カトリック教会
(2)プロテスタント教会
三 日本のカトリック史
(1)草創期と発展の時期
(2)カトリック迫害と諸要因
(3)潜伏キリシタンと隠れキリシタン
(4)日本の伝統思想とキリスト教
四 初期プロテスタント史
(1)初代の宣教師たち
(2)初期日本のキリスト者と教会の形成
(3)一八九〇年代の国家主義と
キリスト教論争
五 キリスト教と社会主義運動
(1)戦前のキリスト教社会主義
(2)赤岩栄牧師の共産党入党問題
(3)戦後平和運動のための
社会主義者たちとの共同闘争
六 日本の教会の朝鮮伝道
七 戦争中のキリスト教
(1)日本基督教団の成立過程と
戦争協力
(2)受難と抵抗の道
教団の主流に属した人々/ホーリネス/ 救世軍/無教会/灯台社/その他
八 日本の神学思想総論
(1)日本の神学思想の特徴
(2)日本の代表的な神学の流れ
■本書あとがきより
1979年3月17日、澤正彦が49歳で天に召されてから15年が経ちました。あまりにも早く、志半ばで逝ってしまったので、彼が残した遺稿を整理し『未完 朝鮮キリスト教史』(日本基督教団出版局、1991年)を、また日・韓両国語で書かれた論文を集めて『日本と韓国の間で』(新教出版社、1993年)を出版しました。いずれの本も澤が日本での出版を意図して書いたものです。今度は、彼が韓国語で書いて韓国で出版した『日本キリスト教史』を日本語に訳して日本の皆さまに読んでいただくことになりましたが、これは彼がまったく意図しなかったことではないかと思います。
澤は「韓国を愛し、韓国のキリスト教の歴史を日本の教会に紹介した人」として知られています。それはまぎれもない事実ですが、彼はまた韓国の教会に「日本のキリスト教史」を紹介した人でもありました。澤は戦後初めての日本人宣教師として、1973年から77年まで韓国神学大学で「日本キリスト教史」「アジア・キリスト教史」などを教え、松岩(ソンアム)教会の協力牧師として大学生の指導に当たりました。彼の韓国での生活や仕事は『ソウルからの手紙』(草風館、1984年)に書かれております。当時の韓国はいわゆる民主化闘争の真只中にあり、彼が教えていた韓国神学大学や同居していた私の家族が闘争の中心になって、それを担っていたため、彼は一連の闘争をつぶさに見て日本に伝えた証人の役割もしました。いまから考えると隔世の感があります。
また日本と韓国の関係もいまでは考えられないほど厳しく、「反日デモ」が日常化していた時代でした。その中で、彼はどこまでも「贖罪的求道者」として、日本が過去韓国・朝鮮に犯した罪なしてきたことを一人で背負って赦しを請うかのように、韓国人を愛し、韓国人と共に生活しました。その後「北朝鮮のキリスト教」を研究するため二年間アメリカに留学して韓国に帰った直後、韓国政府の出国命令で突然日本に帰らざるを得なかったのです。1979年10月、朴正熙大統領が暗殺される直前の出来事でした。
この本はアメリカに行く前の1977年に書いたものを、79年に「大韓基督教書会」で出版したものです。当時は唯一の日本のキリスト教史を知る本でしたので、韓国ではかなり広くました。日本の教会について白紙状態の韓国の読者のために書いたものなので、日本人には周知のこともかなり詳しく(特に注の部分)書かれております。一方、澤は日本キリスト教史の専門家ではなかったため、日本人読者には物足りない部分があるかもしれません。その意味で、この本をそのまま日本語に訳すのに躊躇もありましたが、かえってそれが専門家でない一般の人にわかりやすく日本のキリスト教の歴史を知る本になるのではないかと思っています。
とにかくこの本は「澤は韓国で日本の教会を紹介した」ことの証(あかし)として、彼の召天15年を記念して日本語訳を出すことにしたのですが、出版にはもう一つの理由があります。澤亡き後、1995年に大韓基督教書会で出た改訂版には、彼が漢字で記した日本の人名、地名をハングルに直しているのですが、その読み方が見事なほどに、ほとんど誤っています。そのことを指摘して出版社に手紙を出したのですが、いっこうに改まらないので、澤の名誉のためにもこのような形でこの本を出すことにしました。
韓国人に比べて、日本の人は歴史に対して関心が薄いように感じられます。特に過去の戦争で日本が犯したさまざまな過ちや、アジアの人々に与えた苦しみの清算もできていないまま、いまや日韓和解の雰囲気が盛り上がっています。一方北朝鮮との関係は、一般の人の中にも敵愾心を醸しています。このような状況の中で、日本のキリスト教の歴史をアジアの視点でとらえてみるのも、意味のあることだと思います。この本は徹底的に日本の戦争責任を追及する視点で書かれております。いささか時代遅れの感もありますが、日本人には避けては通れない視点ですし、これからの日本の教会の歩みの中でも記憶にとどめるべき大事な事柄だと思います。
もともと韓国で出された本が不十分であり、また著者がいないという点から、この本の翻訳にはだいぶ苦労しました。いろいろな方の助言や助けによって翻訳が実現されたことを感謝しております。澤亡き後、私はキリスト者でない多くの日本の友人たちを得ることができました。それらの方々にも日本の教会のことを知っていただきたいと思い、できるだけ理解しやすい文章を試みました。同時に澤の文章の味も失わないように心がけました。この本が多くの教会員、またキリスト教を知らない方々にも読まれることを願っております。
2004年初春 金 纓
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