■ロス暴動で問われる在日韓国人の自己証明■新進気鋭による多感な作品集■
ISBN4-88323-149-6 C1093 Y1600E
体裁:四六判 上製 定価本体1,600円+税
◎引き裂かれる自己存在、屈折する民族とことば
「羅聖の空」───────多国籍都市ロスで、さまよう在日のアイデンティティ
「燃える草家」───────帰化を模索する在日韓国人が直面したロス暴動の波紋
★注=羅聖(ナソン)はロサンゼルスのこと
■スイセンのことば■
交錯するアイデンティティー 川村湊
「燃える草家」は、複雑な多民族社会、多言語社会の様相を描いた小説といえる。ロサンゼルスで、黒人に対する差別的な裁判結果が出たことによる、いわゆる「ロス暴動」が作品の背景となっている。言語と国籍と居住権と民族的アイデンティティーの様々な形での交錯が、この小説の基本的な構造を成立させている。そうしたアイデンティティーの交錯という主題をこの作者はロスアンゼルスのコリアンという登場人物たちによって描き出した。
言語によって異なる表情 津島佑子
「羅聖の空」では、ロサンジェルスに住む「在日」の、しかし今は日本国籍になった女性のとまどいを扱っている。アメリカに長く住めば、「在日」の意味も消え、中国語表記の「羅聖」もその韓国語読みの「ナソン」も、カタカナのロサンジェルスも消えLos
Angelesのみの世界になる。植物が土地に適応した新しい種頼に変わっていくように、人間もしだいに土地にとけ込み、別の人間になっていく。そうかもしれない。でも、ちがうのかもしれない。答えを簡単には出したくない。そん、な態度もあり得るのではないか、という作者のつぶやきが、この作品からは聞こえてくる。
■著者略歴■京都生まれ。1979年第4回香大賞、第12回大阪女性文芸賞、第32回文芸賞を受賞。著書『メソッド』(河出書房刊)
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