書籍のご案内(071101現在)
 『首都圏に生きるアイヌ民族』
──「対話」の地平から──
関口由彦

■首都圏に生きるアイヌの人々の日常的な生活■
ISBN978-4-88323-179-9 C1039 体裁:46 判 252ページ 定価本体2,200円+税

《内容》本書は、首都圏で活動するアイヌの人々自身によるライフストーリー(自らの人生の歩みを振り返る物語)の語りを集めたものである。レラ・チセ(アイヌ料理店)という場で、多くのアイヌ民族との出会いに恵まれることによって、本書を著すことができた。本書の読者の方々が、実際に、東京・中野にあるアイヌ料理店「レラ・チセ」や首都圏で行われているアイヌ民族のイベント等の場に足をはこんでくださることで、現実の出会いが生じていけば、対話はより直截に循環する。新しい理解を紡ぎだしつづける対話的なつながりがどこまでも広がり、多くの人びとを巻き込みながら循環しつづけることを切に望んでいます。

《目次》
共に歩む者として──はじめに 
第一部 歩み続ける者たちの日常
踊りの力/紋様を刻む・彫る/神々の遊ぶ庭/「運命としか思えない」 
第二部 生きられる〈民族〉 
〈アイヌ〉=人間として生きる/生きられる文化の伝承/響きあう身体の音色/アイヌ・日本人という生き方/若い仲間 
第三部 未完の対話へ
囲炉裏の風景/生活を守る、家族を守る、文化を守る/差別に抗い続けるということ/いま、アイヌ文化を楽しむ

〈あるアイヌのモノローグ〉僕らの集会に来るシャモを、逆に僕の方からも観察させてもらっています。そうすると、「アイヌに同情することによって、善人としての自己存在をアピールする場」を見つけたと考えて喜んでるシャモ(和人)が多いように感じます。アイヌが語る普通の生活話は退屈そうな顔をしてるくせに、差別話になると目が生き生きして身を乗り出す。そのシャモが何かすごいことをやってる満足感を得るためには、できるだけアイヌの生活や歴史は悲惨な方がやりがいがでてくるらしい。アイヌに対しては、いつまでも「自然保護」を叫ばせて「革命」を目指すことを押しつける。こんな人達に「共に生きよう」みたいに言われると気持ち悪くなってきます[本書]。

【読売新聞書評/2008年1月7日】アイヌなんて嫌だと思ってた。アイヌに何のイメージもなかった。アイヌであることに誇りを持っている。北海道にいたときシャモ(和人)に差別された。差別はなかった。踊りもウポポ(歌)も好きだった。アイヌの文化に関心はなかった……。東京・中野にあるアイヌ料理店。そこに集うアイヌの人びとは多様だ。固定的なアイデンティティを首尾一貫して持っているわけではない。日々、揺らぎながら矛盾の中に生きている。言葉も歴史も知っている「プロフェッショナルアイヌ」になろうとして、空(むな)しさだけが残ったり、自分を「ときどきアイヌ」と規定したり。文化人類学専攻の大学院生だった著者は、この店でアルバイトをしながら、さまざまなアイヌの「生身」に出会う。同質的な「アイヌ性」はどこにもない。人間らしく、自分らしく生きたいと歩みを続けているのみ。その肉声が本の中で響き合い、同時代を生きるアイヌを知りたくなる。 評・小倉紀蔵(韓国思想研究家)

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