書籍のご案内(991110現在)
 『女曲馬師の死-西洋サーカス史33話ギュンター著/尾崎宏次訳

湊川、私の学校■サーカスはもっとも美しい遊戯である――サーカス史の盛衰はじつに無数の物語がおりこまれている。悲しい話、おかしなこと、緊張やドラマチックな出来事、時代性、サーカスの地位、芸人のおかれた位置などなど。サーカスが多様性の統一という娯楽芸術として成立するのは近代ヨーロッパの市民層の形成をまたなければならなかった。ときに市民革命のあったイギリスの曲馬師アストレイの円形劇場から始まる。
  サアー、サアー、覗いてご覧シャイ、これからサーカス史の極彩色の物語が始まるヨー。


定価 本体2,500円+税  ISBN4-88323-095-3  C0076  1997年2月刊

    
        ■目 次■
           序にかえて サーカスとは何か?
1 雇い主の逮捕
2 詩人と猛獣使い
3 賭けごと
4 あほうな仕立職人
5 女曲馬師の死
6 ナイアガラ滝の女王
7 カンカンの競演
8 エルヴィラ・マディガン――或いは幸運の果て
9 陪審員の判決
10 女ともだち
11 道化たちの決闘
12 腕をなくしたヴァイオリン弾きの夢
13 カフェで朝食をとる獅子
14 シュウクスh長さいごの日
15 ヴィネタの沈没――リングの海の中で
16 自由の女神にハンカチーフ
17 深夜のミステリー
18 鉄の手を持つ男
19 火事だ!
20 ″民衆は何かBをはじめるにちがいない″?
21 踊る皿
22 曲馬と将軍
23 にせもののオイディプッス
24 ブラヴォ、シスターよ!
25 まだ郵便はこないか?
26 もしもフェーン(南風)がきたら
27 妙技とは幸運のことである
28 ブンテの後継者
29 勇敢な″歩兵″
30 十月のある日曜日
31 ″ズズロフスカ″のレッテルが生きているように
32 サーカスのオスカー賞
33 イルカの話
解説にかえて――「サーカス物語」、その後 大塚仁子
訳者あとがき

■日本経済新聞 1997.3.16
  欧州サーカス史を短編で俯瞰
 ヨーロッパのサーカスの歴史をつづった本が、どれだけ紹介されているものか、くわしいことはまるで知らないのだが、訳者が「あとがき」で言っているように、「こんな方法で書いたのは珍しい」し、おそらく今後もないだろう。おさめられている33話のそれぞれが、上質のコントか洒落た短編小説の趣きなのである。しかもそのいずれもが、歴史にあらわれたほんのディティールにすぎないエピソードを扱いながら、時代が見え、世態風俗が匂い、ひとのこころが写されて、33話を通読することによって、いつの間にかサーカスという世にもまれなるスペクタクルな総合芸術の全体像を俯瞰(ふかん)していることに気づかされるのだ。  
  本書の著者はボヘミア生まれのジャーナリストで、空中ブランコやパントマイム、サイレント・クラウン、司会などで舞台に立った経験をもっている。大道芸の寄せあつめと見られていたサーカスを総合芸術に仕あげたサラザニの研究者としても知られているそうだが、ひとびとを魅了してやまないサーカスが内包している知的な部分に、鋭い嗅覚をはたらかせてみせる。  
  訳者は、あのベルリンの壁が崩壊する寸前の東ベルリンの書店でこの本に出合い、「たのしみながらこつこつ訳していた。訳しておけば、いつか陽の目をみるときがあるだろうと思っていた」という。いい本が世に出る理想のかたちのひとつがここにあるように思われる。(評論家/矢野誠一)

 

                       ホームに戻る                     
                           

MAIL to WebMaster