■皇軍兵士だった台湾原住民の悲惨な運命■
四六判 縦組 336ページ 98年5月刊
コード ISBN4-88323-102-X C1020
定価 本体2,800円+税
■1942年(昭和17)植民地台湾で原住民に対して「高砂挺身報国隊」(第1回高砂義勇隊)の募集が始まった。以後、太平洋戦争下の南方戦線に向けて7回の「高砂」義勇隊が派遣された。彼らの多くが勇敢に「お国のため」に死んでいった。その「お国」とは「日本国」のことである。戦後、外省人
(新たに大陸からやってきた漢族)のために二重の苦難を強いられ、日本国はいまだに彼らに人並みの補償を果たしていない。台湾原住民の心身には歴史の深い傷跡が宿っている。年老いた彼らがようやく重い口を開いて語りだした。
●目次●
1 斉藤特別義勇隊の編成 遊撃隊長 小俣 洋三 中野学校出身
2 血書志願――第一回高砂義勇隊
(1) 決死隊 ルラデンラマカウ 屏東県瑪家郷 パイワン族
(2) あれがポートモレスビーの灯だ アルツアルラバ 屏東県来義林 パイワン族
3 霧社事件と志願――第二回高砂義勇隊 ワリスピホ 南投県仁愛郷 タイヤル族
4 幻の高砂義勇隊――第三回高砂義勇隊
(1) 全滅したはずが‥…・
(2) 二人の遺骨 ザカラ 台東県成功鎮 アミ族
(3) 強制送還 ピリンスヤン 台中県和平郷 タイヤル族
5 海軍特別陸戦隊――第四回高砂義勇隊 パワンタイモ 南投県埔里鎮 タイヤル族
6 戦闘要員――第五回高砂義勇隊
(1) 潜入攻撃 ヴヤンナウイ 南投県埔里鎮 タイヤル族
(2) ある賞詞 イリシガイ 屏東県奉武郷 パイワン族
(3) 上官殺害事件 ダルパンポキリガン 屏東県三地郷 パイワン族
7 堀内部隊――第六回高砂義勇隊
(1) ブーゲンビル島 イオンハバオ 南投県仁愛郷 タイヤル族
(2) 母の笛 ロヘイタオレ 台中県和平郷 タイヤル族
8 兄弟三人高砂義勇隊――第七回高砂義勇隊 イヨンハパオ 南投県仁愛郷 ブヌン族
資料 「第三回高砂義勇隊の歩みたる一般状況に関する報告書」小隊長 王丸常夫
解説にかえて「台湾原住民族」――歴史を取り戻そうとする人々――小林岳二
■歴史を取り戻す――本書「解説」より
小林 岳二
「ああ、やっと書いてくれたか」、林えいだいさんの『証言 台湾高砂義勇隊』を一読した最初の感想である。本書の中に登場する義勇隊隊員の中には、私も話を伺ったことのある人がいる。私も高砂義勇隊隊員の証言は、是非、記録しなければならないと思っていた。林さんが、私に代わってその願いを叶えてくれた。しかも、「証言」と呼ぶに相応しい迫力である。私の聞き書きの能力では、とても本書ほどの内容にまとめることはできない。本書の出版を心から嬉しく感じる。
義勇隊隊員の戦地での想像を絶する、鬼気迫る体験、日本に対して抱く愛憎入り交じった複雑な想い、それが本書にはよく表れている。また、本書には「哀感」が漂う。登場する義勇隊元隊員すべてから発せられているものだ。彼らは日本の軍隊の下で、まさに命をかけて戦った。それなのに、戦後は日本政府からは放っておかれ、大陸からの外来政権である中華民国政府からは、敵国への協力者として扱われてきたのである。
参考:草風館刊
「証言霧社事件」
「故国はるか ―台湾霧社に残された日本人」下山操子著
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